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デジモンについて
みなさんはデジモンをご存じでしょうか。「デジモンアドベンチャー」というアニメがかつて1999年から2000年にかけて放送されていました。刺さる世代には刺さる作品です。
ワーガルルモンとは、そのアニメに出てくるモンスターです。その相棒に「ウォーグレイモン」というモンスターがいます。この2体のネーミングを英語の観点から見てみましょう。

ウォーグレイモン
まずはウォーグレイモンから見て行きます。
名前を「War+Grey+mon」の3つに要素を分解します。
war
“war”の読み方は「ワー」ではなく「ウォー」です。「スター・ウォーズ(Star Wars)」は「スター・ワーズ」ではないことを思い出しましょう。
・・・と、ここまではよくある解説。これだけでは面白くないので、もう一歩だけ言語の世界に踏み込みましょう。
母音の三角形

この三角形は口の構えとリンクしていて、言語学では基本の知識です。
「母音 三角形」と検索するといくらでも似たような図が出てきます。それほどよく使うのです。
発音に関する重要な知識なので、学校で英語や国語の時間に教えるべきだと私は思います。
縦軸(上下)
まず上下について。「い~あ~い~あ~」と、「い」と「あ」を交互に言ってみてください。
「♪い~あ~い~あ~」
すると、「い」のときは口が狭くなって、「あ」のときは口が広くなっているはずです。
つまり「い」のときは顎が閉じていて、「あ」のときは顎が開いているはずです。
これが【図1】の縦軸「閉↔開」に対応します。
横軸(前後)
次に、「い~う~い~う~」と言ってみてください。このとき、唇は「い」の横に広がった状態を維持してください。
するとこんな音になります↓
「♪い~う~い~う~」
すると「い」のときは舌が前のほうに、「う」のときは舌が後ろのほうに移動していることが感じられるはずです。これが【図1】の横軸「前↔後」に対応します。
開閉&前後の組み合わせ
「閉↔(真ん)中↔開」という要素と、
「前↔(真ん)中↔後」という要素で整理すると、次のようになります。
顎 舌
↓ ↓
あ=開&中
い=閉&前
う=閉&後
え=中&前
お=中&後
「え」は「い」と「あ」のあいだにあります。
「お」は「う」と「あ」のあいだにあります。
口を開く途中で顎を止めると「え」と「お」の響きを得られます。
「♪い→え→あ、う→お→あ」
この開閉と前後の組み合わせが、母音(あいうえお,aiueo)に隠された構造です。
w+ar→w+or
「war」に話を戻します。
ここで読み方のルールを導入します。
wの後ろの母音字は、母音の三角形で一個上げて読む
(参考『英語のフォニックス』p103~)
まずは図解します。

“ar”という文字は通常「アー/ɑːɚ/」と読みます。
【例】
bar/bɑːɚ/(バー)「棒」
car/kɑːɚ/(カー)「車」
「♪ar, bar, car,」
しかし、wがくっ付くと文字はarなのに「オー/ɔːɚ/」と読みます。
【例】
war/wɔːɚ/(ウォー)「戦争」
wの後ろのaが【図2】のように1個上がってoになります。実際の発音はworだと思うべきです。
【例】
award/əˈwɔːɚd/「賞」
よく「*○○アワード」とありますが間違いです。正確には「アウォード」です。
warning/ˈwɔːɚɪŋ/「警告」
これも「*ワーニング」と言いたくなりますが、ぐっとこらえて「ウォーニング」と発音しましょう。
「♪war, award, warning」
ただし、gの文字が後続すると通常どおりaで読むなど、このルールには例外も多少あります。さらに詳しく知りたい場合は『英語のフォニックス』(研究社)をp104から読んでみてください。
【例】
wag/ˈwæg/「しっぽを振る」
wagon/ˈwægən/「荷馬車」
「ウォーグレイモン」まとめ
「WarGreymon」は「*ワーグレイモン」ではなく「ウォーグレイモン」であるとわかりました。
なお、ざっと検索したとろ、Greyの部分はGreatに由来しているそうです。
monの部分ですが、デジモンの名前にはすべて「モン」が付きます。
“ワー”ガルルモン
ウォーグレイモンと名前は似ていますが、「ワーガルルモン」の「ワー」とは何でしょうか?
もちろん、warではありません。warは「ウォー」と読みます。
「ワーガルルモン」の英語表記は次のとおりです。

“were”の部分にも、もちろん意味があります。
ハリーポッターとアズカバンの囚人
唐突ですが、ハリーポッターの第3作「ハリーポッターとアズカバンの囚人」にも同じ要素が出て来ます。

「’werewolves’とスネイプは言った。」
werewolfとは「人狼、狼人間」のことです。
【発音】
werewolf
/ˈweɚˌwʊfl/(ウェアーウルフ)
または
/ˈwɚˌwʊfl/(ワーウルフ)←デジモンではこっちを採用
【ルーピン先生】
『ハリーポッター』シリーズでは、だいたい毎年新しい先生がやってきますが、3年目のルーピン(Lupin)先生は狼人間で、満月の夜は狼に変身するのでした。
ルーピン先生の名前はラテン語のlupus(ルプス)「狼」に由来していて、狼との関連を暗示しています。
ラテン語lupusは、現代ではフランス語のloup(ルー※最後のpは発音しない)「狼」に受け継がれています。
このように『ハリーポッター』シリーズではネーミングにラテン語やフランス語がちりばめられています。
werewolfの訳には「人狼」がぴったりで、なんと”were”の部分は「人」を意味し、”wolf”の部分は「狼」を意味します。まさに「人狼」です。
1000年くらい前、”wer(ヴェル)”という単語は「人」を意味していました。現在ではwerewolfという単語に残っているだけです。この1000年前くらいの英語を古英語と言います。(参考『英語の歴史』(中公新書)kindle版458/2706)
人狼の特徴
人狼は二足歩行です。こんな感じ↓

さて、「ワーガルルモン」に進化する前はガルルモンというモンスターです。

そして、この「ガルルモン」が進化することで、「ワーガルルモン」になり、二足歩行になります。

つまり、人狼の特徴を得ることで「ワー(人)ガルルモン」になるのです!!!
結論
「ウォーグレイモン」
「ワーガルルモン」
この2体はコンビみたいな感じで、よく一緒に戦います。名前も「ウォー」と「ワー」で始まり方が似ています。しかし、
ウォー(war)は「戦争」という意味、
ワー(wer(e))は「人」という意味、
です。
私は長年「ウォーグレイモンとワーガルルモンは、なんで微妙に名前が違うんだろう?ていうかワーって何だ?」と疑問でしたが、英語史(英語の歴史)と英語の発音を勉強して、スッキリしました。
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