ゆるラテン語講座 第8回 超初級のラテン語を勉強したら英検1級単語を習得していた件【Ⅷ未完了過去直説法能動相 前編】

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導入

教材

『ラテン語初歩』(岩波書店)の練習問題を通して、ラテン語、英語、フランス語について解説します。

ラテン語の発音方法

だいたい、ローマ字読みでOKです。
例 dominus→ドミヌス

§75.練習問題13(羅文和訳)

問1

【問題】
Injūriam vidēbās sed tacēbās.

【単語】
injūriaインユーリア, ae f.「不正、不法」
videōウィデオー[第二活用]「見る」
sedセドゥ「しかし」
taceōタケオー[第二活用]「黙る」

injūriamの活用は、対格単数で、訳は「不法を」です。

【活用表】
puellaプエッラ「少女」
単数
主格(が) puellaプエッラ 
属格(の) puellaeプエッラエ 
与格(に) puellaeプエッラエ 
対格(を) puellamプエッラム 
奪格(から)puellāプエッラー 

複数
主格(が) puellaeプエッラエ 
属格(の) puellārumプエッラールム 
与格(に) puellīsプエッリース 
対格(を) puellāsプエッラース 
奪格(から)puellīsプエッリース 

vidēbāsとtacēbāsが今回から扱う未完了過去です。-bam以下の部分が全五活用で同じなので、代表でamōの活用表を使います。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābantアマーバントゥ

訳は、「あなたは見ていた」「あなたは黙っていた」です。

【解答】
「あなたは不法を見ていが、しかし黙っていた。」

ラテン語のinjūriaは、英語のinjury/ˈɪndʒəri/「けが」と関係があります。不法(正しくないこと)→負傷という方向に意味が広がりました。

意味が飛躍しすぎなのでは?という気もしますが、まぁ英語学習においては、語源の知識なんて、こういうふわっとしたくらいで十分です。

問2

【問題】
Tacēbant sed clāmābant.

【単語】
clāmōクラーモー[第一活用]「叫ぶ」

Tacēbantとclāmābantの活用を見ます。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābant

複数三人称なので、主語は「彼らは」です。

【解答】
彼らは黙っていた、しかし叫んでいたのだ。

う~ん、深い!?

ラテン語のclāmoは、英語のclaim/ˈkleɪm/「主張する」と関係があり、そもそもは「大声で叫ぶ」という意味でした。現代英語では「大声」の意味は失われ、「言い張る」意味が残りっています。

【例文】
The country claimed the territory as its own.
その国はその地域を自国の領土だと主張した。

問3

【問題】
Audiēbant sed tacēbant.

【単語】
audiōアウディオー[第四活用]「聞く」

活用表を見ると、主語は「彼らは」です。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābantアマーバントゥ

【解答】
「彼らは聞いていた、しかし黙っていた。」

ラテン語のtaceōは、英語のtacit/ˈtæsət/「暗黙の」や、taciturn/ˈtæsəˌtɚn/「無口な」と関係があり、英検1級レベルです。ラテン語の勉強は英検1級の対策になるのです!

問4

【問題】
Resistēbam contrā injūriam.

【単語】
contrāコントゥラー「~に対して」[対格支配]
resistōレスィストー「抵抗する」[第三活用]

Resistēbamとinjūriamの活用を見ると、主語は「私は」です。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābant

【解答】
私は不正に対して抵抗していた。

ラテン語のresistōは、英語のresist/rɪˈzɪst/と関係があります。

ラテン語のcontrāは、英語のcontradict/ˌkɑːntrəˈdɪkt/「反論する」などと関係があります。

contra○○で「反○○」といった造語成分(単語をつくる部品)になります。
【例】
contraception/ˌkɑːntrəˈsepʃən/「避妊法」
contravene/ˌkɑːntrəˈviːn/「違反する」

これらも英検1級レベルです。

問5

【問題】
Ad puellam rosam cottīdiē mittēbam.

【単語】
adアドゥ「~へ」[対格支配]
puellaプエッラ, ae, f.「少女」
rosaロサ, ae, f.「ばら」
cottīdiēコッティーディエー「毎日」
mittōミットー「送る」[第三活用]

puellamとrosamの活用をまとめて確認すると、

【活用表】
puellaプエッラ「少女」
単数
主格(が) puellaプエッラ 
属格(の) puellaeプエッラエ 
与格(に) puellaeプエッラエ 
対格(を) puellamプエッラム 
奪格(から)puellāプエッラー 

複数
主格(が) puellaeプエッラエ 
属格(の) puellārumプエッラールム 
与格(に) puellīsプエッリース 
対格(を) puellāsプエッラース 
奪格(から)puellīsプエッリース 

どちらも単数対格です。puellamはadの支配下にあって「少女に」、rosamは普通に「ばらを」という訳でしょう。

あとはmittēbamの活用がわかれば、意味を特定できます。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābant

主語は「私」です。

【解答】
少女にばらを、私は毎日送っていた。

ラテン語のcottīdiēは、英語のquotidian/kwoʊˈtɪdiən/「(発熱などが)毎日の」と関係があります。/k(w)o/の音は、ラテン語ではquo-で綴られたり、co-で綴られたりします。

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