導入
大学教科書なのに解答が付いていない、学生泣かせの名著『ラテン語初歩』の練習問題を解きつつ、ラテン語や英語について解説します。
《発音》
ローマ字読みすれば、だいたいラテン語になります。
【例】dominus /ドミヌス/
棒が上に乗っていたら、長く読みます。
【例】dominī /ドミニー/
§83. 練習問題15-4 羅文和訳
【問題】
Errābās, puer, sed nunc nōn errās.
【単語】
errō[第一活用]「誤る」/エッロー/
puer, erī, m.「少年」/プエル/
sed「しかし」/セドゥ/
nunc「今」 /ヌンク/
nōn「ない」/ノーン/puer
errōの未完了過去がerrābāsです。活用表で単複と人称を確認します。
未完了過去
§70 amō「愛する」
単数
1人称 amābam
2人称 amābās
3人称 amābat
複数
1人称 amābāmus
2人称 amābātis
3人称 amābant
errābāsは2人称単数ですね。和訳は「あなたは間違っていた」です。
次のpuerですが、これは呼格と言って呼びかけで使います。呼格は辞書形と同じ形です。呼格は文頭から2番目以降の位置に来るのが普通です(§83 註1)。和訳は「少年よ」と呼びかける形にです。
最後のerrāsは現在形(§25)です。
現在直説法能動相(現在形)
§25 第一活用 amō「愛する」
単数
1人称 amō
2人称 amās
3人称 amat
複数
1人称 amāmus
2人称 amātis
3人称 amant
単数2人称ですね。nōn errāsで「あなたは間違っていない」という否定文です。
【解答】
少年よ、君は間違っていた、しかし今は間違っていない。
・日本語らしく呼格は文頭に置きました。
・最後の「間違っていない」の主語も「君」です。
§84. 練習問題16-4 和文羅訳
【問題】
少年[複数]よ、君たちは誤っていた、しかし今は間違っていない。
【単語】
errō[第一活用]「誤る」/エッロー/
puer, erī, m.「少年」/プエル/
sed「しかし」/セドゥ/
nunc「今」 /ヌンク/
nōn「ない」/ノーン/puer
「少年」を複数にしろということなので、複数呼格(主格と同じ形)にしてあげます。
名詞 第二活用(2)
§79 puer「少年」
単数
主格(が) puer
属格(の) puerī
与格(に) puerō
対格(を) puerum
奪格(から)puerō
複数
主格(が) puerī
属格(の) puerōrum
与格(に) puerīs
対格(を) puerōs
奪格(から)puerīs
puerīが複数呼格です。
「君は誤っていた」なので、未完了過去errābamを複数2人称にします。
未完了過去
§70 amō「愛する」
単数
1人称 amābam
2人称 amābās
3人称 amābat
複数
1人称 amābāmus
2人称 amābātis
3人称 amābant
errābātisです。
「しかし今は」は素直にsed nuncとします。
「(君たちは)間違っていない」と考え、現在形の複数2人称をつくります。
現在直説法能動相(現在形)
§25 第一活用 amō「愛する」
単数
1人称 amō
2人称 amās
3人称 amat
複数
1人称 amāmus
2人称 amātis
3人称 amant
errātisです。nōn errātisで「君たちは間違っていない」です。
【解答】
Errābātis, puerī, sed nunc nōn errātis.
呼格は文頭より後に置きます。
英語語源コーナー!
今回出てきたラテン語のerrōは、英語のerror/ˈerɚ エラー/「誤り」に派生しています。