導入
『日本語の作文技術』(朝日文庫)は、「読む側にとってわかりやすい文章を書くこと」を目的として書かれた本です。ところが読んでみると、なかなか難しいです。そこで、この記事では本の内容をわかりやすく、内容を厳選してお届けします。
言葉を組み立てるルール
本に出てくるルールを、コンパクトに4個に絞りました。なんとか、これだけは覚えましょう。
【ルール(超コンパクト版)】
①修飾は節を先に、句をあとに。
②長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。
③上記が逆転する場合はテン(、)を打つ。
④(長い)並列する修飾語はテン(、)を打つ。
(参考:『日本語の作文技術』p86, p130, )
①~④が身に付いたら、本を実際に手に取って、作文技術をさらに補強してください。
修飾とは何か?
『日本語の作文技術』での修飾とは、こんな感じのことです↓

この状況を、「速く」が「走る」にかかっている、とか、「速く」を「走る」が受けている、と言います。この「かかる」ことを修飾と呼びます。
これから色々と見ていくので、今は「ふーん?」くらいで良いです。
ルール①を使ってみる!
ここに一枚の紙があるとします。それがどんな紙か説明する言葉を並べてみます。
白い紙
横線の引かれた紙
厚手の紙
上記の3つをひとつにまとめてるなら、次のようにしてください。
横線の引かれた厚手の白い紙
これがルール「①修飾は節を先に、句をあとに。」の結果です。
わかりやすいように、部品ごとにカッコとルビを付けてみます。
[横線の引かれた][厚手の][白い]紙

この修飾なら何の問題もありません。
なお、節とは「述語を含む部品」のことです。例えば、
[横線の引かれた]
という部品は「引かれた」が述語なので、節と呼びます。
一方で、[厚手の]と[白い]は動詞がないので句と呼びます。
ルールを破ると・・・
あえてルールを破ってみましょう。①修飾は節を先に、句をあとに。を破って、句(白い)を先に置いて見ます。
【悪い例】
白い横線の引かれた厚手の紙
どうでしょう?これでは紙ではなく、横線が白いことになってしまいます。

さらにルールを破ると、もっとひどくなります。
【もっと悪い例】
白い厚手の横線の引かれた紙

☟こんな感じでしょうか。もうめちゃくちゃです。

こういう謎の状況を描写したい場合を除いて、ルールを破らない方がよいでしょう。
句を節より前にすると、句が節を修飾してしまうことになり、紛らわしいのですね。
ルール②を使ってみる。
ルール「②長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。」です。
白い紙
横線の引かれた紙
厚手の紙
上記は、次のように並べてもOKです。
【良い例ではある】
[横線の引かれた][白い][厚手の]紙
節はもちろん、先頭に置きます。次に、[白い]→[厚手の]と続いていますが、これでも誤解はありません。じゃあ[白い]と[厚手の]のうち、どちらを先にするか?迷ったら、特段の理由が無い限りは、長い方を前にしてください。
【良い例】
横線の引かれた厚手の白い紙
このルールは、意味が変わる例を出すと、すごく難しくなるので、説明はここまでにしておきます。とにかく基本方針は長いものは前、短いものはうしろです。
ルール③を使ってみる
とはいえ、文脈とか強調の関係で「白い」を最初の持って来たい場合もあるでしょう。そのときは、テン(、)を打ちます。
【次善の例】
白い、横線の引かれた厚手の紙
これなら「白い≠横線」ですから、意図した意味が成立します。
この文は、「①修飾は節を先に、句をあとに。」・「②長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。」という2つのルールを破っています。①については「白い」という句さ先に来ていますし、②についても「白い」という最も短い修飾語が最初に来ています。
それでも、テンを打てばOKなのです。誤解を避けるためには、このテンは打たなければいけないテンです。
ところで「白い=横線」という意味にしたい場合は、
「白い横線の引かれた厚手の紙」
が正解となります。この場合、
「白い、横線の引かれた白い紙」
のテンは、打ってはいけないテンなのです。
ちなみに、
「横線の引かれた、厚手の白い紙」
のテンは、打たなくてもよいテンです。テンを打つことでより読みやすくなると判断したら打ってもOKです。
このように、
・打たなければいけないテン
・打ってはいけないテン
・打たなくてもよいテン
これら3つのうち、いま自分はどのテンを打っているのか、常に意識しましょう。
ルール④を使ってみる
「④(長い)並列する修飾語はテン(、)を打つ。」というルールを考えます。
ここに1枚の紙があるとします。その紙を表すことばを並べます。
雪のように白い紙
横線の引かれた紙
ザラザラ厚手の紙
長さが一緒なので、試しにそのまま繋げてみましょう。
雪のように白い横線の引かれたザラザラ厚手の紙
これでは、「白い横線」という意味になり、紙が白いことにはなりません。そこで、テンを打ちます。
雪のように白い、横線の引かれた、ザラザラ厚手の紙
これなら、「白い≠横線」ですから、「白い」は「紙」にかかるしかありません。
長い修飾語が並列している場合は、それぞれにテンを打ってあげます。

なお、「横線=雪のように白い」としたいなら、次のようにテンを打ちます。
雪のように白い横線の引かれた、ザラザラ厚手の紙

この場合は、「雪のように白い、」のテンは打ってはいけないテンとなります。
なお、どこからが「長い」修飾語なのか、本の中に定義はありませんが、「修飾を含む句」以上くらいに考えるとよいでしょう。
例えば「[雪のように][白い]」の本体(述部)は[白い]という句ですが、修飾語である[雪のように白い]がくっ付いているので、「長い」と判断するわけです。
おわりに
テン(、)の打ち方について再編集して即戦力の技術としてお届けしました。しかしカードゲームで言うと、テンの知識はほんのスターターパックにすぎません。とはいえスターターパックだけでも威力は抜群です!
テンの打ち方をある程度理解したうえで、もしも興味があれば『日本語の作文技術』という本を実際に手に取って、ご自身で「拡張パック」的な知識を補充してください。テンは本の知識のほんの一部です。