アラビア語の教材
(§〇)は『第二外国語で学ぶアラビア語入門』の章を表しています。気になる人は買ってみてください。
語学における「性」とは
奇跡的に私たちが学校で勉強する英語や日本語には名詞・形容詞の「性」は存在しません。この点で日本は英語圏に支配されてラッキーでした。英語以外の外国語には「性」というものがある場合が本当に多いです。
フランス語を例にとりましょう。
「お父さん[男性名詞]」
「お母さん[女性名詞]」
上記は生物と一致してるので、まぁ分かります。
しかし謎なのが、
「家[女性名詞]」
「レストラン[男性名詞]」
このように、なぜか無生物にも常に性があります。
で、英語のtheに当たるフランス語に、
「男性名詞用の定冠詞 le/ル/」
「女性名詞用の定冠詞 la/ラ/」
というのがあります。つまり「家が」女性名詞だと暗記しておいて「la 家」と言わなければいけないのです!テキトーに「le 家」とか言ったら間違いになってしまいます。
特に無生物の場合、男性か女性かということに理由は無いとされていることが多く、外国人の私たちとしては泣きながら丸暗記するしかありません!
そしてアラビア語もまた、男性・女性をしっかり把握していないと運用できない言語のようです。
【参考:フランス語単語】
père「父」男性名詞←わかる
mère「母」女性名詞←わかる
maison「家」女性名詞←は?
restaurant「レストラン」男性名詞←なんで?
アラビア語 女性形の作り方
名詞・形容詞共に、男性形の語末から-un/ウン/を取って、-atun/アトゥン/を付ければ女性形になります。まずは名詞から
طَالِبٌ
/tʶaːlibun/
/ターリブン/
「男子学生」
↓
طَالِبَةٌ
/tʶaːlibatun/
/ターリバトゥン/
「女子学生」
アラビア文字としては「ダンマのタンウィーン」を取って「ファトハ」+「ター・マルブータ」+「ダンマのタンウィーン」付けるという操作をしています。
次に形容詞を女性形にしてみましょう。
جَدِيدٌ
/dʒadiːdun/
/ジャディードゥン/
「新しい(男性形)」
↓
جَدِيدَةٌ
/dʒadiːdatun/
/ジャディーダトゥン/
「新しい(女性形)」
では「新しい女子学生」を作ってみましょう。
طَالِبَةٌ جَدِيدَةٌ
/tʶaːlibatun dʒadiːdatun/
/ターリバトゥン ジャディーダトゥン/
「とある新しい女子学生」
最後に定冠詞を付けてみましょう。
اَلطَّالِبَةُ اؐلْجَدِيدَةُ
/ʔa.tʶ|.tʶa.ː.|li.|ba.|tu. l.|dʒa.|di.|ː.|da.|tu/
/cv.c.|cv.ː.|cv.|cv.|cv.c.| cv. |cv.ː.|cv.|cv/
/ア.ッ.タ.ー.リ.バ.|トゥ.ル.| ジャ.ディ.ー.ダ.トゥ /
今回は以上です。
【注意!以下難しいです】音声に興味がある人へ
最後の例文で「.」はアラビア語の拍の区切りを表していて、「|」はアラビア語の音節の区切りを表しています。アラビア語の拍「.」がちょうど日本語のカナ1文字ずつに対応しています。
cは子音、vは母音を表します。
さて、文中の定冠詞al/アル/のaは発音しないのでした(§8)。すると、
/アッターリバトゥ ルジャディーダトゥ/
としたいのですが、/ldʒa ルジャ/の部分のccvを許容できないため、cを一個前の音節の最後にくっ付けて、
/アッターリバトゥル/tul/(cvc) ジャ/dʒa/(cv)ディーダトゥ/
として解決させたわけです。ccvは無理ですが、cvcとcvはOKです。
このような都合で、アラビア語は単語をまたいで独特のリズムを生み出しています。
音声は名古屋外国語大学出版会のウェブサイトにありますので、気になる人はトラック19番を聞いてみてください。また音節や拍について知りたい場合は東京外国語大学言語モジュールのアラビア語を見てください。