【英語】「ウォレット」と「ワレット」はどちらが正しいのか?【英語の発音・フォニックス】

英語の解説

どちらの表記も見受けられる

もともとは wallet「財布」という単語からきていますが、カタカナにすると「ウォレット」と「ワレット」の両方が流通しているようです。この記事では、どちらが正しい発音なのか検証します。

〈ウォレット〉の例

iPhone「ウォレット」という機能は、クレジットカードなどを登録しておけるサービスです。

Googleの「ウォレット」も同じような機能です。

〈ワレット〉の例

財布の商品紹介ページを見ると〈ワレット〉という表記も見られます。

文字と発音(フォニックス)

〈ウォレット〉と〈ワレット〉は、どちらがより良い書き方なのか。調べるために、英語の発音を分析していきます。

まずは、基本的な文字と発音の関係を見ます。以下〈〉は文字、//は発音を表します。

〈a〉の発音

〈a〉という文字は原則として、
短音たんおんで/ア æ/
長音ちょうおんで/エイ eɪ/
と発音する。

短音の文字には〈ă〉を付けます。
長音の文字には〈ā〉を付けます。

【例】
ăt/アット æt/「~に(前置詞)」
āte/エイト eɪt/「食べた(eatの過去形)」

※ateのeはサイレント・イー(Silent e)と言って、eは発音せず直前の母音字を長音で発音させる。なので、atは短音で/アæ/と読み、ateはサイレント・イーが働いて/eɪt/と読む。

参考『英語のフォニックス』研究社 p44, rule5, rule6

〈o〉の発音

説明の都合上、ここでoの文字の読み方を解説します。

〈o〉の文字は原則として、
短音で/アー ɑː/
長音で/オウ oʊ/
と発音する。

【例】
hŏt/ハーット hɑːt/「暑い」
hōme/ホウム hoʊm/「家」
※homeのeは「サイレント・イー」ね😉

【「長短」でモヤっとした人だけ読んでください】
まず「カタカナの数=英語発音の長さ」と考えてください。すると〈a〉の短音は「ア」(←カタカナ1文字)で長音は「エイ」(←カタカナ2文字)です。「ア」より「エイ」が長いと納得できます。しかし〈o〉の文字は短音が「アー」でカタカナ2文字、調音も「オウ」でカタカナ2文字分の長さです。そうです、音声は「アー」と「オウ」どっちも長いです。〈o〉の文字の短音「アーɑː」は、昔は短い音/オ ɒ/(この点イギリス英語は保守的で、現代もこの発音を保っています。)だったのですが、歴史的な経緯(father vowelとの合併)で現代のアメリカ英語(General American, GA)では長く発音するようになりました。古い辞書を使っている場合は短い母音のままになっている可能性があるので注意してください。執筆時点で最新の『Cambridge English Pronouncing Dictionary 18th Edition』や『ジーニアス英和辞典第6版』では長い表記「hot/ハーット hɑːt/」という表記になっています。なお、色々と便利なので、この記事では昔の呼び方を使って「短音」「長音」と呼びます。

〈w+a〉のフォニックス

ここでルールをひとつ導入します。

【ルール】
〈w〉に〈ă〉が続くと、〈ă〉を〈ŏ〉として扱う
(『英語のフォニックス』研究社 p103, rule13)

【確認!】
〈a〉の読み方は、
①/ア æ/
②/エイ eɪ/
です。
〈o〉の読み方は、
③/アー ɑː/
④/オウ oʊ/
です。

①②③④のどれかを当てはめて、正確に発音しなければいけません。
ここで冒頭のwalletに戻ります。なおwalletのaは短音〈ă〉とします。

ここで、を当てはめて、
wăllet/*ウェアラットゥwælət/ とするのは誤りです。

〈wă〉は〈wŏ〉として扱うルールが効いているので、を当てはめます!

〈o〉の短音である/アー ɑː/を当てはめて、
wăllet/ワーラットゥ ˈwɑːlət/ が正解です。

ジーニアス英和辞典第6版

音写の吟味

「wăllet/ワーラットゥ ˈwɑːlət/」という発音をどのようにカタカナにするかが問題です。「ワーラットゥ」がもともとの発音に近いですが、この表記は流通していません。

共通部分「-レット」

walletの後半、-lletは「ウォレット」も「ワレット」も「レット」です。

発音記号は/lət/ですが、/ə/は「ア」と読みます。
綴りに引きずられて「エ」と発音しているように聞こえちゃうかもしれません。
また、〈ə〉という文字と〈e〉という文字が似ているので紛らわしです。
しかし/アə/と/エe/は別の音です!

本当は「ウォット」「ワット」と読むと後々の整合性が取れるのですが、綴りに引きずられて日本語では「-レット」が広く流通しています、残念。

ウォ vs ワ

実は今まで論じてきたのはアメリカ英語です。イギリス英語なら「ウォレット」に近い発音になります。

英/ウォレットゥˈwɒlɪt/

一方で、「ワレット」はアメリカ英語の

米/ワーラットゥ ˈwɑːlət/

から来たものでしょう。/アーɑː/が長い音なので、せめて「ワーレット」とワーを伸ばしてくれたらとは思いますが、「ワレット」でも良しとしましょう!(?)

結論

「ウォレット」はイギリス英語
「ワレット」はアメリカ英語

好みの問題なので、好きな方を使おう!

♪wallet(英)→wallet(米)

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