ゆるラテン語講座 第11回 discipulus, verbum, magister…ラテン語はだいたい全部英語にある【Ⅸ名詞第二活用②】

諸言語
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導入

教科書

大学教科書なのに解答が付いていない、学生泣かせの名著『ラテン語初歩』の練習問題を解きつつ、ラテン語や英語について解説します。

ラテン語の発音

ローマ字読みすれば、だいたいラテン語になります。
【例】dominus /ドミヌス/

棒が上に乗っていたら、長く読みます。
【例】dominī /ドミニー/

§83.練習問題15-2 羅文英訳

問題

【問題】
Discipulī verba magistrī audiēbant.
/ディスキプリー ウェルバ マギストゥリー アウディエーバントゥ/

【単語】
discipulus, ī, m.「生徒」/ディスキプルス/
verbum, ī, n.「言葉」/ウェルブム/
magister, trī, m.「教師」/マギステル/
audiō[第四活用]「聞く」/アウディオー/

解説

Discipulī

名詞discipulusは、単数主格の語尾が-usで、単数属格の語尾が-īなので、名詞第二活用(1)である、と特定できます(§51)。さて、名詞dicsipulīは何格か活用表で確認しましょう。

【活用表】名詞第二活用
 dominusドミヌス「主人」

単数
主格(が) dominusドミヌス 
属格(の) dominīドミニー
与格(に) dominōドミノー
対格(を) dominum ドミヌム
奪格(から) dominōドミノー

複数
主格(が) dominīドミニー
属格(の) dominōrumドミノールム
与格(に) dominīsドミニース
対格(を) dominōsドミノース 
奪格(から) dominīsドミニース

-īで終わるのは、単数属格「生徒の」・複数主格「生徒たちが」です。どちらにするか、いったん保留にして次に行きます。

verba

verbumは、単数主格の語尾がum、単数属格の語尾が-īで終わるので、名詞第二活用(1)の中性名詞の方とであると特定できます(§51, §54)。verbaを活用表で確認しましょう。

【活用表】名詞第二活用
 
verbumウェルブム「言葉」
単数
主格(が) verbumウェルブム
属格(の) verbīウェルビー
与格(に) verbōウェルボー
対格(を) verbumウェルブム
奪格(から) verbōウェルボー

複数
主格(が) verbaウェルバ
属格(の) verbōrumウェルボールム
与格(に) verbīsウェルビース
対格(を) verbaウェルバ
奪格(から) verbīsウェルビース

複数主格「言葉が」・複数対格「言葉を」のどちらかですが、どちらかを選ぶのは一旦保留にします。

magistrī

magisterは、単数属格でmagistrīになってeが消えるので、名詞第二活用(2)のager型の方だと特定できます(§79, §81)。

名詞 第二活用(2)-2 §79
agerアゲル, grīグリー, m「耕地」
単数
主格(が) agerアゲル
属格(の) agrīアグリー
与格(に) agrōアグロー
対格(を) agrumアグルム
奪格(から) agrōアグロー

複数
主格(が) agrīアグリー
属格(の) agrōrumアグロールム
与格(に) agrīsアグリース
対格(を) agrōsアグロース
奪格(から) agrīsアグリース

単数属格「教師の」・複数主格「教師たちが」のどちらかです。これも結論は保留です。

audiēbant

audiōの未完了過去audiēbamの活用形です。何数何人称か確認しましょう。未完了過去は名詞第1~第5活用まで同じ語尾なので、第一活用のamōを使います。

【活用表】未完了過去(直説法能動相)
 amō「愛する」
単数
1人称 amābamアマーバム
2人称 amābāsアマーバース
3人称 amābatアマーバトゥ

複数
1人称 amābāmusアマーバームス
2人称 amābātisアマーバーティス
3人称 amābantアマーバントゥ

複数三人称なので、audiēbantの和訳は「彼らが聞いていた」です。

合体

ここまでの分析の成果を並べます。

【問題文】
Discipulī verba magistrī audiēbant.

【和訳の候補】
「生徒の・生徒たちが」「言葉(複数)が・言葉(複数)を」「教師の・教師たちが」「彼らが聞いていた」。

理屈の上では、「生徒たちが」「言葉が」「教師たちが」の3つすべてが「彼らが聞いていた」の主語になれます。

実践では文脈で判断となるでしょうが、これは練習問題で単独の文です。そこでひとまず先頭の単語を主語として考え、主格(が)をとして解答をつくります。すると他の単語は主格以外に絞られます。

生徒の・生徒たちが」「言葉(複数)が・言葉(複数)を」「教師の・教師たちが」「彼ら(=生徒たち)が聞いていた」。

解答

生徒たちが教師の言葉を聞いていた。

§84.練習問題16-2

問題

【問題文】
生徒たちが教師たちの言葉を聞いていた。

解説

さきほどの§83.練習問題15-2と比べて、「教師たちの」の部分だけが異なるので、magisterを複数属格に差し替えればOKです。

名詞 第二活用(2)-2 §79
agerアゲル, grīグリー, m「耕地」
単数
主格(が) agerアゲル
属格(の) agrīアグリー
与格(に) agrōアグロー
対格(を) agrumアグルム
奪格(から) agrōアグロー

複数
主格(が) agrīアグリー
属格(の) agrōrumアグロールム
与格(に) agrīsアグリース
対格(を) agrōsアグロース
奪格(から) agrīsアグリース

magistrōrumで「教師たちの」となります。

解答

Discipulī verba magistrōrum audiēbant.

英語語源コーナー!

今回出てきた単語は、次の英単語に派生しています。

【ラテン語→英語】
discipulus→discipline「しつけ」
verbum→verb「動詞」、verbal「口頭の」
magister→master「支配者、名人」
audiō→audio「音声の」、audio book「オーディオブック」
(参考『英語語源辞典』)

ぜんぶ英語にありましたね!これぞ英語学習者がラテン語を勉強する意義です。

日本語では「オーディオ」と言えば再生機器を指しますが、英語のaudioは再生機器までは意味しません。再生機器を言いたいときはaudio systemと言います。
(参考『ジーニアス和英辞典』オーディオ)

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