良書だが発音記号にだけ落とし穴あり!『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』【Kindle Unlimited】

英語発音
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概略

Kindle Unlimitedで読める!

今回ご紹介する『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』は、執筆時点(2025年1月)でKindle Unlimitedで読めるので、おススメです。

Kindle Unlimitedとは、月額980円で対象の本が読み放題のサービスです。月に1冊以上の単行本や雑誌を読めば、十分に元が取れます。

どんな本?

ざっくり言うと『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』は「動詞句を学ぶ本」です。
動詞句とは、「動詞+前置詞」とか「動詞+副詞」の組み合わせで意味を成すセットです。

例えば「get」のページを見ると、

get along with~「~と仲良くやる」
get around~「~を上手く避ける」
get at~「~を意図する」
get away with~「~してもただで済む」

(『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p41~43)

と、ひたすら「get+〇〇」という形を学習します。

「get」と「along」と「with」と、それぞれの意味は知っていても、3つが合体して「get along with」になると新たに「~と仲良くやる」という意味が爆誕するので、合体後の意味も暗記する必要があります。

英語の語彙の増やし方には大きく分けて2通りあります。
1つ目は古典ギリシャ語やラテン語由来の難し~い単語を覚えることです。

【例】
古典ギリシャ語→hypothesis「仮説」
ラテン語→magistrate「判事」など。

2つ目は簡単な単語を組み合わせた意味を覚えることです。主に動詞句です。

【例】
get+along+with=仲良くやる

よって、2つめの「簡単な単語を組み合わせた意味をたくさん覚えたい!」という目的がある場合は、ぜひ『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』を読んでみてください。

発音記号の問題点

音声を聞こう

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』は良い本ですが、発音記号には注意が必要です。誤っていると思われる部分もありますので、発音に関してはダウンロードした音声を聞くなど対策をしましょう。

凡例を見ると

発音記号を扱う辞書や単語帳には、どういった基準で発音記号を使うのか書いてある場合があります。

例えば『ターゲット1900 6訂版』ではp14に「本書で使っている発音記号とその音の具体例」の記載があります。

では今回の『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』ではどうかと言うと、次のような記載があります。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p8

発音記号は「IPA(国際音声記号)に基づき、オリジナル表記を使用してい」るそうです。

IPA(the International Phonetic Alphabet)というのは、世界中の言語の発音を表せる発音記号が大集合したものです。こんな感じ↓

では実際に発音記号を見ていきましょう。

doの発音

まずはdoの発音記号です。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p33

/dʊ/とあります。

いったん、ここでputを見ましょう。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p133

/pʊt/とあります。

ここで分かるのは、残念ながらdo/dʊ/は誤りということです。

doは「助動詞」「動詞」の両方の用法があります。

What do1 you do2?
「お仕事は何ですか?」
(『ジーニアス英和辞典第6版』do)

1個目のdo1は助動詞なので弱く読み、発音記号は/də/などとなります。一応、『Longman Pronunciation Dictionary』では弱い母音として/ʊ/を立てていますし、弱母音じゃくぼいんとしてなら/dʊ/もまぁOKです。

しかし『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』で紹介されているのは、2個目の動詞のdo2のはずです。動詞の場合は強く読むので、/duː/とすべきです。少なくとも、doとputには別々の母音を当てるべきです。

動詞のdoとputは母音が違います。

【do/duː/と同じ母音の例】
cool/kuːl クール/
super/suːpɚ スーパー/
crew/kruː クルー/
など

put/pʊt/と同じ母音の例
book/bʊk ブク/
full/fʊl フル/
could/kʊd クドゥ/
など

誤って母音を入れ替えてしまうと、pull/pʊl/「引っ張る」とpool/pl/「プール」などで、意味が変わってしまう場合もありますので、注意して覚える必要があるのです。

ただ/ʊ/と/uː/の取り違えは、実戦の会話では文脈などで防げるとも思いますが、少なくとも書籍にする場合は混同すべきではないでしょう。

/ɛ/の正体

getの発音記号は次のとおりです。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p38

/gɛt/とあります。/ɛ/は個人的には好きな発音記号です。というのも、エに聞こえる英語の発音が複数あって、できれば区別したいのです。

【エの区別】
短母音のエ(bed, end)は/ɛ/
二重母音のエは(cake,say)は/eɪ/

/ɛ/は口をより大きく開き、/e/は口をより狭く開くという特徴がありますが、これは最上級レベルに難しいです。/ɛ/と/e/を取り違えても意味の違いは発生しないので、よりネイティブな発音にしたい人だけ意識してみてください。

ちなみに『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』では、sayは次のとおりです。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p126

これは最上級レベルの発音ケアですね!

謎の/ɜr/

turnの発音記号を見てみましょう。

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』p233

/tɜrn/とあります。これは完全にこの本オリジナルの記号と言えるでしょう。私も初めて見ました。

まず、さっきの/ɛ/と今回の/ɜ/は別物です。/ɛ/はエの音で、/ɜ/はアの音です。

/ɜ ア/の記号を採用している辞書も存在していて、海外の『Longman Pronunciation Dictionary』『Cambridge English Pronouncing Dictionary』ではturnを/tɜ˞ːn/としています。『ジーニアス英和辞典第6版』など、日本の一般的な辞書だと/tərn/としていることが多いです。

/ɜ˞ː/でも/ər/でも発音は同じで「アー」です。なお、私は『初級英語音声学』や『ライトハウス英和辞典』にある/ɚ/という表記が好きです。なお、こういう感じの「アー」です↓

♪/ɜ˞ː/=/ər/=/ɚ/(アー)

で、『パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』では、海外と日本の中間くらいの表記で/ɜr/としているのです。でも発音は同じく「アー」で、turn/tɜrn ターン/となるので整合性は取れています。

ただ、これは大学で英語の音声を勉強しないと解読できない難しさなので、せめて出版にあたっては主な日本の辞書に合わせて/tərn/としてほしいところでした。

結論

パパッと頭に入る 英語の動詞図鑑』は、動詞句を覚えるにあたっては優良な教材です。しかし、発音記号には謎のクセがあります。そこで発音が気になる場合は、付属のダウンロード音声を聞くなり、お手持ちの辞書で発音記号を確認し直すことをオススメします。

本気で発音を良くしたい!

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大学レベルで教わるような「音声学」という発音の科学を根拠に講義を進めるので、トライアル・レッスンだけでも受けてみる価値は十分にあります。

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